地震による火災は、事前の備えと知識で被害を最小限に抑えることが可能です。
なぜなら、通電火災やガス漏れなどの発火原因には共通の対策が存在するからです。
ただし、予想外のもらい火や複合災害には、完全な防止が難しい場合もあります。
当記事では、地震による火災の発生原因や確率、実際の事例、家庭での対策方法、そして保険との関係までを幅広くまとめています。被害を避けるための実践的な情報をお届けします。
地震による火災の基礎知識
地震による火災が起きる理由
地震による火災は、地震発生時の強い揺れにより電気機器やガス設備が破損し、火元が生じることで発生します。たとえば、停電後に電力が復旧した際、倒れた電気ストーブやコードの断線部分から発火する「通電火災」がよく知られています。また、地震直後に調理中のガス器具が倒れたり、ガス管が破損したりすることで引火するケースもあります。特に木造住宅が密集する地域では、火災が広がりやすいため注意が必要です。都市部の古い住宅街や狭い路地では避難や消火活動が難しく、火災が拡大する恐れがあります。電気とガスという2つのエネルギー源が、地震によって同時に危険をもたらすことが火災発生の大きな要因です。
地震による火災の発生確率とは
地震に伴う火災の発生確率は、地震の規模や発生地域の建物密集度、都市のインフラ状況に大きく影響されます。たとえば、1995年の阪神・淡路大震災では、約100件を超える火災が発生しました。総務省消防庁のデータによると、大規模地震発生時には100件以上の火災が同時多発する可能性があるとされています。特に東京都など人口密集地域では、地震発生直後に火災が起きる確率が高いと見積もられています。地震によって電気・ガスが同時に停止し、揺れによる家具や機器の転倒が加わることで、火災が発生しやすい条件が整ってしまうためです。このような確率の高さからも、備えが非常に重要です。
地震による火災の主な原因
地震による火災の主な原因には、通電火災、ガス漏れによる引火、暖房器具の転倒、ろうそくや仏壇の火種による出火などがあります。特に「通電火災」は、停電後に電気が復旧する際に発生しやすく、東京消防庁でも注意喚起が行われています。家具や家電が倒れた状態で通電が再開すると、ショートや過熱によって火が出ることがあります。また、ガスコンロを使用中に地震が発生すると、鍋の吹きこぼれや火が衣類に燃え移ることで火災につながることがあります。さらに、仏壇のろうそくや線香が倒れることによる火災も多く報告されています。これらの原因は日常の生活環境に深く関係しているため、事前の対策が求められます。
地震による火災が発生した場合
地震で火災が起きたら何をすべきか
地震で火災が発生した場合、まずは身の安全を確保したうえで、火元が近く小規模であれば消火器を使用して初期消火を行うことが重要です。東京消防庁では、震災時の初期消火には火災発生から3分以内の対応が効果的とされています。ただし、炎が天井に達している場合や煙が多い場合は無理に消火せず、速やかに避難することが推奨されます。避難時は濡れたタオルで口や鼻を覆い、姿勢を低くして煙を避けながら建物の外へ出ます。また、建物を出る際には扉や窓を閉めて空気の流れを遮断することで延焼を防ぐことができます。119番通報が可能な場合は、火災の場所や状況を具体的に伝えることが求められます。
地震による火災でもらい火したときの対応
地震による火災で隣接する住宅からもらい火を受けた場合、自宅に過失がなければ火災保険の対象とならないことが一般的です。日本では「失火責任法」により、重大な過失がない限り火元となった家の所有者に賠償責任は発生しません。そのため、東京海上日動火災保険や損保ジャパンなどの火災保険では、もらい火に備える補償が含まれているかを事前に確認することが重要です。また、避難時には延焼のリスクを見極めつつ、安全な場所への移動を最優先とします。万が一の事態に備えて、非常持ち出し袋や貴重品の準備も日頃から行うべきです。火災発生後には被害状況を記録し、保険会社への速やかな連絡が求められます。
過去の地震火災の事例を知る
過去の代表的な地震火災の事例として、1995年の阪神・淡路大震災では、神戸市長田区を中心に約7,500棟が焼失しました。電気ストーブやガス器具の転倒による出火に加え、密集した木造住宅が延焼を助長し、大規模な火災へと発展しました。また、2011年の東日本大震災では、宮城県気仙沼市で津波による油の流出と火災が複合的に発生し、市街地の一部が炎に包まれました。これらの事例から、地震火災は単なる地震被害にとどまらず、都市構造やインフラ、避難体制が大きく関係することがわかります。過去の教訓を踏まえ、建物の耐震化や火災に強い住宅づくりが今後ますます重要になります。
地震による火災への対策
地震による火災を防ぐための準備
地震による火災を防ぐためには、日頃からの備えが重要です。たとえば、東京ガスが提供する「マイコンメーター」には地震の揺れを感知して自動的にガスを止める機能があり、ガス漏れによる火災を防止できます。また、電気火災を防ぐには、地震時に電気の供給を自動で遮断する「感震ブレーカー」の設置が推奨されています。家具や家電が転倒しないよう固定具を使用し、火の気のある近くには可燃物を置かないようにすることも基本的な対策です。さらに、非常時に備えて住宅内の消火器の設置や防災マニュアルの整備も欠かせません。地域ごとのハザードマップを確認し、避難経路や避難所を事前に把握しておくことも火災リスクの軽減につながります。
家庭でできる地震火災の対策
家庭で実施できる地震火災の対策には、いくつかの実用的な方法があります。まず、地震感知機能付きのブレーカーを導入することで、停電後の通電火災を防ぐことができます。たとえば、パナソニックの「感震ブレーカー」は、震度5強程度の揺れを検知すると自動で電源を遮断します。また、ガスコンロは地震時に自動で火を止める機能がある機種を選ぶことが効果的です。さらに、仏壇やコンロ周辺には燃えやすいものを置かないよう整理しておくことが重要です。定期的に家族で防災訓練を行い、初期消火の方法や避難の流れを確認することで、万が一の火災時に落ち着いて行動する力が養われます。備蓄品として消火スプレーや懐中電灯も用意しておくと安心です。
地震後の安全確認ポイント
地震発生後には、火災を防ぐためにいくつかの安全確認を行う必要があります。まず、東京消防庁でも推奨されているように、電気のブレーカーをすぐに落とすことが通電火災の防止に直結します。次に、ガスの元栓を閉め、ガス臭がしないかを確認します。異臭がある場合は東京ガスなどの供給会社に連絡し、安全が確認されるまでは点火しないようにします。コンセント付近のコードや家電製品が破損していないか、また可燃物が倒れて火の元に接触していないかも確認が必要です。さらに、家の外壁や電線、プロパンガスの設置状況など、屋外の危険箇所も目視で点検します。余震に備え、再度火の気のある器具の使用は避け、必要なら避難所へ移動する判断も重要です。
地震による火災と保険の関係
地震による火災に対応する保険とは
地震による火災に備えるには、火災保険だけでなく地震保険への加入が必要です。通常の火災保険では、地震を原因とする火災には補償が適用されないことが一般的です。たとえば、損保ジャパンや東京海上日動の火災保険では、地震による火災の損害は補償の対象外となる場合があります。しかし、地震保険をセットで契約することで、地震による火災・損壊・埋没・流失などに対応できます。地震保険は政府と民間保険会社が共同で運営しており、補償内容や支払限度額は法律によって定められています。持ち家だけでなく、賃貸住宅の家財も対象とする契約が可能です。地震による火災リスクを考慮するなら、火災保険とあわせた総合的な加入が推奨されます。
地震による火災でもらえる保険金の条件
地震による火災で保険金を受け取るためには、地震保険に加入していることが大前提です。たとえば、東京海上日動の地震保険では、火災を含む「全損・半損・一部損」のいずれかと認定された場合に保険金が支払われます。火災の損害が建物や家財に明確に発生し、損害認定基準に達していなければ、補償の対象外となる場合があります。また、地震後の火災による損害であっても、被害の証明や写真記録、保険会社への迅速な連絡が必要です。地震火災の補償額は、火災保険の補償額の50%が限度となっていることが一般的で、全額補償ではない点にも注意が必要です。契約時には補償内容や条件を保険会社に確認しておくことが重要です。
火災保険と地震保険の違い
火災保険と地震保険は補償対象や運用体制に大きな違いがあります。火災保険は、落雷・風災・水災・爆発・盗難などによる建物や家財の損害に対して補償されますが、地震・噴火・津波を原因とする損害には基本的に対応していません。一方、地震保険は地震や津波など自然災害による被害に対応し、火災保険とセットで加入する必要があります。たとえば、三井住友海上の火災保険に単体で加入しても、地震による損害は補償されず、地震保険の付帯が求められます。補償額についても、火災保険は建物の再建費用に相当する金額を設定できる一方で、地震保険はその50%が限度となる制度です。補償の範囲や条件を理解し、必要に応じた組み合わせで備えることが重要です。
まとめ
地震による火災は、正しい知識と事前の対策によって被害を軽減できます。
火災の主な原因や発生リスク、保険の補償内容を理解しておくことで、いざという時に落ち着いて行動できるからです。
家庭での備えや保険の見直しを通じて、安全性を高めることが重要です。今後の防災対策に役立ててください。